「三階節」唄詞 | |
昭和05年07月10日 戯魚堂発行「さんかいふし」より | |
「おいな」踊りと似た唄詞が多数あり、「おいな」の唄詞番号に似た唄詞を合わせた、従って「さんかいふし」の掲載順位 | |
ではない。(青文字類似唄詞) | |
01. | 明けたよ夜が明けた ていらあの 鐘打つ坊主や お前のおかげで夜が明けた |
02. | 宵の明星箒星 天に うす雲はいたやさてまた夜明けの流れ星 |
03. | 盆買いして貰うた なあにを 晒しの手拭真鍮のかんざし 買てもらた |
04. | 若い時やどどかせげ しねば 極楽浄土の蓮華の台座に 乗りうつる |
05. | 下宿番神堂がよく出来た がうはあい 向拝の仕掛けは 新町宗吉おほてがら |
06. | 七夕提灯よくできた おらも あつらへましょうかこしらてもらはうか 笠五郎さ |
07. | 奈良や市川下山田 星野 星野のドブ酒三杯呑んでは色を出す |
08. | 御意見申したい かみを 島田に結ふより心を島田に しやんともて |
09. | 十七八は嫁ごろだ いつか お祝げんすませて お茶でも呑んだら それもよかろう |
10. | 高い山から谷見れば おまん おまんが可愛や 染分襷で布晒す |
11. | ねまり地蔵や立地蔵 ほとけ 仏に似合はん 魚の売買いなされます |
12. | 閻魔前なる茶屋の嚊(かか) 地獄 地獄へやらぬはさりとは閻魔のよてを引く |
13. | 隣から団子貰うた きなこ黄粉が足らんで大きに旦那の お腹立ち |
14. | 出家さと酒呑めば 出家さが一升)呑んで 私が五ン合呑んで酔うた酔うた |
15. | 思はく絵にかけば 一丈 一丈の紙にも二丈の紙にも 書きあまる |
16. | 米山さんから雲が出た いまに 夕立が来るやらピッカラチャッカラドンガラリンと音がする |
17. | 勝願寺で嫁をとる 町中 町中の評判新町綾衣足あがり |
18. | 出家(しげ)さ出家さと声にする 出家さ 出家さの御歓化坂越えても参りたや |
19. | 蝶々蜻蛉やきりぎりす おやま お山でさへづる松虫鈴虫くつは虫 |
20. | うらの畠で茄子もげば 茄子が もげそでもげない畑の回りで御相談だ |
21. | 柏崎から椎谷迄 あひに 荒濱荒砂悪田の渡しが無か宜かろ |
22. | 夜露夜露と恋にする 夜つゆ 夜露で咲く花 何程見事で恋にする |
23. | 猫ぢゃ猫ぢゃとおっしゃいますが 猫が 下駄はき杖つき絞りの浴衣できやるものか |
24. | 信州信濃の平之丞が たこに 蛸に見込まれ今でも死骸が見えません |
25. | 蔵の戸前で一寸出逢うた 話せ 話せや談れや胸内ある事皆話せ |
26. | 道楽坊主とこなせども よるは 毎晩語ざれやおいとし殿さまと云てまねく |
27. | 何処の子だ善いきりよだ もとの うまれがよいやら育ちがよいやらきりょがよい |
28. | 吉原通うた時 道中で 路銀になづんで七子の羽織を質におく |
29. | 忘れた寝忘れた まくら まくらの小屏風に朝日のさす迄寝忘れた |
30. | 二十七日諏訪祭り をどり をどりの中にも子供衆が四五人よくそろた |
31. | 信州野尻の池みたら かもが 三々が九つ白鷺三羽に鵜が七つ |
32. | 谷根河内や青海川 子供 米山参りやわが身を清むるはらひ川 |
33. | 奥州眺むれば 船が 馳せます馳せます出村のお米だ出て招く |
34. | 恋にこがれて盆待ちた 盆に 踊もしないで何だとてこんつら盆待ちたやら |
35. | 下で高いが湯殿山 山で 妙高山より弘法大師の高野山 |
36. | 可愛がられた竹の子が いゝまぢや きられてわられて桶のたがにかけられてしめられた |
三階節 ―その由来― |
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三階節は柏崎名物の一ツであって、全国に宣伝されて居る唄である、その節調は情緒を搖動するデリカシーの乏しい三下がり | |
ではあるが、優艶にしてしかも野趣あり、踊は上品の中に瓢逸酒脱の趣がある。 | |
今此の由来を尋ぬるに承往の頃下町(現今本町五丁目)専福寺に法話の妙を得た僧侶があって、この説教を聴聞した善男善 | |
女が僧の雄弁にして且つ法話の妙なるを嘆稱し | |
出家(しげ)さ出家さと声にする 出家さ 出家さの御歓化坂越えても参りたや | |
と唄ったのが抑々三階節の始めだと伝えられて居る。 | |
俚謡の発生し流行したる本来の性質は、声に発して唱ふる所にあり、三階節の如きは歌に合して踊る所に其の独占的趣味と | |
風韻とを味ふ事が出来るのだが、茲では音楽上の曲節の事は説明する余地が無いから単に文字上詞章の記述のみに止めて置 | |
く。併し乍ら形式の零碎な彼の都々逸に比して、着想措辭の優れたるもの、濃艶典雅の詞章杯に缺くる所ありとは云え、醇朴野 | |
趣の格調、飄逸酒脱の風韻に又三階節独特の趣向ある事を認むべきである。 | |
編 者 識 | |
昭和05年07月05日印刷 昭和05年07月10日発行 〔定価 金十二銭〕 新潟県刈羽郡柏崎町枇杷島百八十二番 編集発行人・印刷人 桑山太市 同県同郡同町本町六丁目 印刷所 小田活版所 同県同郡同町本町六丁目 発行所 戯魚堂 |